ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

近藤 康平

もうすぐ画集が出るので、そのPOPを描いてほしいって言われていて。普段ライブペインティングをやるから、こうして話しながら描くのも大丈夫です。

僕はここで生まれ育って、鳥取大学の森林学科というところで森の勉強をして。都内で絵本の編集をしたあと、絵を仕事にするようになって。8年前かな。母が亡くなって父さんが1人になるから、僕が戻ってくることになるんだよね。目の前が森だから、鳥とか動物もいっぱいいて。僕のモチーフは自然が多いし、この静けさで描ける環境は気持ちいいですよ。

父と母が引っ越してきた理由も、ここに森があったからなんだよね。小さいころは毎日森のなかで遊んでて。土がむき出しになったところを滑ったり、粘土層の土を集めて焼き物をつくってみたり。そういうのが遊びだったの。あとは粘土で小さな人をつくって、1日かけて物語をつくってた。やっぱり小さい人物が好きなんだよね、相対的に世界が広くなるから。世界の広さみたいなものを感じたいっていうのは、割と僕の基本的な感性だと思う。

絵を描き始めたのは29歳のとき。当時ミクシィってあったでしょう。文章を書くのもな、と思って、絵を描いて投稿し始めたのが最初のきっかけ。なんていうか、手っ取り早いじゃない。言葉はひとつの意味を成立させるのに時間がかかるし、音楽で表現するにはテクニックがないし。絵はきれいだと感じたことをさっと描いたら、ぱっと見て伝わる。せっかちだから、自分に向いてると思って。

音楽はすごく好きで。なかでもフィッシュマンズっていうバンドが一時期、狂ったほど好きだったのね。最初の頃はフィッシュマンズみたいな、音楽みたいな絵っていうのをテーマで描いていて。たとえば誰かがタバコを吸っているのをきれいだと感じたら、たいていの人はそのまま歌っちゃう。だけど彼らはギターの音色とか、それが感じられるような歌詞とかで表現する。僕も、風景をそのまま描くっていうよりは、あのときの感動に近いなにかを描く、みたいな。そういうやり方にすごく刺激を受けたんだよね。

いろんなバンドメンバーと仲良くなっていくうちに、ライブペインティングやってよって話になって。フェスとかで公開制作に近いことをやる人は増えたけど、僕はライブハウスで始めたから、パフォーマンスってことを意識してやっています。その時間の豊かさとか、そこにいる人たちとその時間を共有することをエンターテイメントにできたら、ライブペインティングっぽくなるのかなって感じで。

音が鳴って、景色が見えてきて、描き始める。色もなんとなく決まっていく。あとはドラマが浮かぶっていうか。一人きりの女の子がいるなとか、遠くに街が見えるだろうなとか。歌の展開によって、即興でどんどん変化させていく。お客さんも、この音楽だと近藤はどうやって絵を描くんだろうって楽しみにしてくれている。年間150本くらいやっていた時期もあったけど、毎回違うから。それがよかったんだよね。初めて一緒にやる人の場合は、その人の前情報を入れないようにしてて。ものすごい緊張感だけど、1回目はそのときだけだから。それを味わい尽くすようにしています。その方が、奇跡が起きやすいから。

画集で出すような絵は描き方も違うし、向かう態度も随分違う感じがあるね。僕のバックボーンには自然っていうものがあるから、自然から感じたような感情がひとつのモチーフです。あとは絵本の仕事をしていたので、抽象画じゃなくて物語を見つけていく作業が好き。日本人っていうのも、もうひとつのバックボーン。庭のなかに浮いてる小さな岩が島に見えたりさ。そういう見立てる、日本的な感性をどこかで引き継いでいるんだろうと思うけど。

じっと見ていると、物語が見えてくるじゃない。この襖のシミもさ、ここが浮いてる惑星で、女の子が腰掛けてたら気持ちいいだろうな、とか。傘をさしてるけど、そろそろ雨が止みそうだ、そしたら鳥も飛んでくるだろう、とか。

描けば描くほど、次にやってみたいことが出てくる。偶然に任せて描いているから、雲を眺めているのと同じ感じですよ。今日はこういう形なんだなって。飽きないです。

最近は台湾とか、海外に呼んでもらうこともあって。ほかの場所で制作するような時間も増えていくだろうけど、ずっとここに住んでいくんじゃないかな。