ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

武田 萌花

作品制作を始めたのは高校3年生の春です。進路に悩んでいたところ、今在籍している東京藝術大学先端芸術表現科を知ってここしかないと思い、アートが何かもよくわからないまま制作を始めました。6年経った今、何かわかったのかと言われると、わかった気になっているだけなのかなと思います。ゆっくり、続けていくしかないです。

大学入学と共に取手という地に制作の拠点を持ちました。今は実家から通学していますが、学部生の頃は2年ほど取手駅近くにアパートを借りていて、制作が立て込んだ時など利用していました。
私は「風景」「移動」というテーマを扱っているからか、一定の場所に留まっているよりは、色々な場所を飛び回っている時の方がインスピレーションが湧いたり思考が巡っていく感覚があります。そうした流動的な生活の中にどう制作活動を組み込んでいくのが良いのか、まだ試行錯誤しています。制作と生活が分離してしまうことをどう乗り越えていくかが、これまでもこれからも課題だと感じています。

新型コロナウイルスの状況次第ですが、2022年にドイツヘの交換留学を予定しています。それに伴って休学を挟むので、語学勉強をしつつ少しゆっくりしながら自分の制作テーマや作品を作ることについて考えてみたいと思っています。留学では特にこれまでの制作スタイル、作品形態などをアウェーな環境でより客観的に見つめ直せたらと。自分の作品制作が、これまでと全く違う環境でどう映るのか、多分落ち込むことが多いと思いますが、一度ぶつかってこようと思います。
「作品を作らないと生きていけない」みたいなタイプのアーティスト像に憧れる気持ちもありつつ、私は制作を辞めてもきっと生きていけてしまうなあと落ち込んだりすることがよくあります。私にとっては、作品制作以外にも他者とコミュニケーションをとる術は沢山あって、寧ろ作品制作がここ数年で突如現れたツールのようなものだったりします。けれど、なぜかまだアートにしがみついている。それは勿論美術が好きという純粋な気持ちもありますし、自分の人生を変えた決定的なきっかけであり、その魅力に今も引き寄せられているのかもしれません。
生きていく上で複数ある選択肢の中で、私はアートを選んで続ける、ということをこれからもしていけたら良いのかな、と思います。芸術に出会っていなかったら今頃私は、とてもつまらない人間になっていただろうな。


Day Tripper/2020年/令和元年度東京藝術大学卒業制作展・東京都美術館
「風景」を「移動」というキーワードから考察するインスタレーション作品。鑑賞者は夜行バスのようなシートに座り作品を体験する。窓には車窓風景が流れ、「風景と移動」にまつわる物語の映像が正面のスクリーンに投影されている。ただそこにある風景に対して多くの人が日々移動をしている。電車、夜行バス、乗用車など日常的なあらゆる移動の時間に思いを馳せ、またその速度についていけずトリップするような感覚になる。


Space runner/2021年/アトラス展-歯向かう者-東京藝術大学取手校地
移動中に出会う風景を、軽トラックの荷台にインストールしていく作品の第一弾。移動するアトリエのようなイメージ。絶賛軽トラック募集中!!!(※作品に使用して良い軽トラックを探しています。)