ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

好光 義也

今は東京藝術大学の大学院に通いながら、振付師をしています。振付師になるきっかけは、京都の大学で、映画学の授業を受けたことでした。それがおもしろくて、映像制作をしている場所でインターンができないか探していたら、ダンスのインターンシップなら紹介できるという話になって。正直、希望していたものとは違ったんですけど、まあいいかと思って。それで、エルサレムにあるマホルシャレムダンスハウスという、小さなダンスカンパニーに行ったんです。そこには世界中からダンサーが来ていて、すごくおもしろくて。体を動かすことで自分も同じ言語を持てる、というか。踊ってみたい、と思うようになりました。

人とコミュニケーションをとるためのツールという意味で、もともと語学を勉強するのが好きで。今もドイツ語とヘブライ語を習っています。誰かと仲良くなろうとするとき、違うバックボーンでも、なにか共通点が見つかれば仲良くなれる。ダンサーと話をしていても、自分が踊れない状態でしゃべるより、自分も身体が動かせる状態で話したほうが、仲良くなれるような気がしていたんですよね。踊ることは、そういう好奇心で始めた感じがあります。

日本に戻ってきてからいろいろな舞台に出たり、振付師の方から勉強して、2017年に初めて自分の作品をつくりました。そうしているうちにSAI Dance Festivalというコンペティションに出てみたら、賞をいただくことができたんです。それで、これからもやってみようと決めた感じがあって。勉強しながら作品をつくれたらと思って、今年、取手に来ました。

ヨーロッパのダンスカンパニーに所属することを考えた時期もあったんですけど、当時テクニックを教えてもらっていた振付師の先生と話しながら、ダンサーよりも振付師を目指したほうがいいんじゃないかということになって。ダンスをしている人たちのところに行って、そこでできる表現に合わせるんじゃなくて、自分がかっこいいと思えることをやり続けてみたい。最初は誰にも知られず、すぐにお金も入らないかもしれないけれど、そのほうがいいと思ったんです。

最近は物や音、それを観る観客のあいだに自分の声や身体を挟み込むことで、物や音の質感を増幅させたり、あるいはちょっと変化させたり。別の物語を加えたりっていうことをしています。

少し前には友人の彫刻家と一緒に、物にヤジを飛ばすっていう作品をつくって。例えばここに木があって、それを見たまま描写するときにヤジを飛ばす。すごく軽そうに見えたら「軽い!軽い!軽い!」って。「めっちゃ線入ってるぞ!」「そこだけ白いやんけ!」みたいに。ただものを描写しているだけなんだけど、そうすることで見えているものが浮き彫りになったり、なぜかこの物がエンパワメントされているような感じになって。自分の身体を見てほしいというよりは、物や音に関わることで自分の身体も見てもらえるし、一緒になった物や音が一層際立ったりするような作品をつくりたいと思っています。

いろいろな人から影響を受けているけれど、特に、スーザン・フィリップスから受けているものは大きいと思います。京都にいたとき、芸術祭でアーティストのアテンドをしていて、初めて出会ったアーティストなんです。彼女は建築や風景のなかに音を当てることで、その空間をあらわにしたり、別の意味をまとわせたりしていて。作品に込められた意味合いや層みたいなものが、それを見たとき瞬時にして伝わっていくことがすごくおもしろいんですよね。それまで気にもしていなかったことが見えるようになったり、別の意味が付与される瞬間を見たとき、芸術のおもしろさを感じました。

身体を動かすこともそうだけど、アイデアを考える時間が好きです。空想上のパフォーマンス作品を頭の中でつくることがよくあって。その妄想を形にして、人に見てもらいたい。せっかく取手にいるので、地元の人にとって身近な物や場所で作品をつくりたいですよね。標識でポールダンスをしてみるとか、利根川で遊ぶ映像を再編集してみるとか。思わず笑ってしまうような、バカバカしい感じの作品を、もっとつくってみたいと思っています。