ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

アトリエ蔵

アトリエ蔵 メンバー(左から新妻篤、森岡慎也、深谷直之)

深谷直之

普段は彫刻、立体作品を全て石の素材で作っています。制作方法は機械工具を使わずに、手作業の道具だけで作っています。
小さい頃から作ったり描いたりは好きで、自然とこの世界に足を踏み入れた感じでしたね。ただ最初は石で彫刻を作るということは全く頭になかったんです。大学の素材の実習が色々ありまして、木、鉄、粘土、石、その中でも石の実習に関しては、他の素材と比べて苦も無く作れちゃったのでもしかしたらずっと石を使い続けるかなという予感はしていました。

「大地の循環・ホルン」

自然界が作る造形美が好きです。草花、水、海、風、空、雲、みんな生きていて動いている、その動いている一断片の物語が我々が実際見ている物ですが、その自然界が作る、動いている造形美の中で一番好きなものが地形なんです。
元々小さい頃から鉄道模型のジオラマが好きで、上から俯瞰して世界がある、この感覚が好きなんです。地形は隆起して雨風に晒され、形になっていくんですけれど、この侵食されていくその時の美しさをどうしても作ってみたかったんです。激しい造山運動、侵食運動で鋭く尖った峰というのが、彫刻としても、作る側としても魅力的で、アルプス山脈やヒマラヤ山脈など険しく人が立ち入ることがなかなか難しい山が好きです。
石の場合は付け足すことができない。削いでいく一方なので、削りながら修正していくしかないんです。どの工程も辛いんですよね。毎日毎日アクシデントや立ち行かないことが襲ってきます。他の素材と比べると厳しい素材ではありますけれど、そこが魅力なのかもしれないですね。

普段は、山以外にも依頼をいただいて動植物を石で制作しています。山や風景の作品は、ライフワークとしてこれからも続けて行こうと思っています。
みなさんが触って、見られて、という公共の場所に作品があるように引き続き関わっていきたいと思います。石彫作品が生活の中に溶け込んでいってくれる存在になってくれるといいなと考えています。
 


森岡慎也

私は石を使って彫刻とか、モザイク壁画、あとコンテンポラリージュエリー、中でも指輪を中心に作っています。
取手市には、大学院の修了制作の作品が取手市長賞に選ばれて、今は戸頭の駅前に作品が飾ってあります。

「王とHHひ」第8回取手市長賞受賞 提供:取手市文化芸術課

アトリエ蔵には立ち上げメンバーが三人いて、私はその内の一人でした。だからもう20年になりますね。大学院の時に取手校地に来て、取手にも住んでいました。大学院を卒業する前にアトリエを探して、いろんなところを見に行ったんですけど、農協さんがこの石蔵を芸術家に貸してくれるという話が市役所から来まして、ここを借りることができました。
大学に入る時点では、立体造形的な仕事ができればいいくらいの気持ちで入ったんです。石の講義で石を知って。石を好きに彫るっていうことを続けるには、仕事に就くという選択肢より、芸術家になるという選択肢しかなかったので、大学時代に芸術家になろうと決めたと思います。多分大変ではあるんですけれど、それが苦労かって言われると苦労じゃないと思っていて、やりたいことが自由にできているっていう喜びの方が大きいですね。

「プロフェッショナル」

野球のバットとボールとグローブを原寸大で作りました。
作ったのは5年前くらいなんですけど、その頃は身近にある何かを石にするということをやっていまして、高校時代に使っていて大事に取っておいたバットとボールとグローブがあるので、これは一回作りたいなと思ってチャレンジしました。
石で作品を作る上でのこだわりは、モチーフの本物に近づけるということも重要なんですけど、結局石が石に見えなくなってしまってはダメというか、せっかく使っている石に申し訳無いので、石っぽさは残さないといけないということですね。色も全て、石そのままのものを使って、組み合わせています。
今後、とりあえず作りたいなと思っているのは庭ですかね。枯山水が好きなので、自分なりの枯山水を作りたいなあと思っています。あと、石の家とか、洋服とか。作りたいものはいっぱいあります。
 


新妻篤

石を素材にして、現代を生きている人物像や、生活の中の消耗品、日用品を彫刻しています。

「日の戯れ」

大学に入って最初の実習で、石以外にも塑像、木彫、金属など一通り色んな素材に触れる中で、他の素材は割と最初に触れた時に素材と表現のイメージが繋がりやすかったんですけど、石は唯一取っ付きが悪かったというか、作ってもあんまり面白いかどうかが分からなかったんです。逆にそこに引っかかりを感じて、自分で材料を買いに行って制作する実習のときに、石を選択して。そこで大理石を扱ってから、卒業制作までの間で、もう少しこれを続けると何か見えてくるかもしれないなと思って今に至ります。他の素材に比べて難儀なことも多いですが、そこも含めてまだまだ面白さは尽きないです。

「四角い海」

この作品に限ったことではないんですけど、人物像を作る時に意識しているのは、ちょっとストレスが掛かった、閉塞しているようなポージングだけど、同時にちょっと開けている、気持ちだけは解放されているみたいな。閉塞しているのと解放しているのを両方一個の形で見せられるみたいな表現ができないかなとここ何年かずっとやっています。形の整合性をとっていくのが人体は難しいけど、その分時間をかけて考えながら制作する楽しみが一番あるモチーフだと感じています。作る作品のイメージによっては石の上から彩色することもあります。
元々実家も我孫子で、高校も取手市内の高校だったので、ずっと取手市にはお世話になっています、古巣ですね。制作に集中できる環境があって、生活を営む上でも不便なく、河川敷の広い土手の風景だったり、そういうおおらかな場所があるのもいいところだと思っています。
今までは技術向上も含めて具象表現を主にやってきたので、今後は抽象的な作品も作りたいなと思っています。他にも、イメージに合えば、石以外の素材を組み込んだ作品もやってみたいです。あまり一つの型に嵌らず、作っていてワクワクするようなものを極力自然に選び取っていくことができるといいですし、それを続けていくことで今思ってもいないようなことが考えられたり、見えて来たりすると思うので、そういう気持ちがあるうちは続けられればいいなと思っています。

アトリエ蔵 外観

アトリエ蔵

創設から2020年で20年目を迎えた大谷石造りの元農協米蔵を改造した共同アトリエ。
現在は、石彫を専門とする芸術家3人が制作をおこなっている。

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