東 弘一郎
普段は鉄と自転車などのジャンクを組み合わせた作品を制作しています。東京藝術大学取手校地にある金工室へ連日通っています。制作でいつも金属加工を行う以上、機械や設備に依存してしまうので、制作する上では欠かせない場所になっています。つくった作品は、大学構内での展示はもちろんですが、近年は都内や地方のまちでも大型の作品を発表しています。
基本は毎日制作のことを考えながら生活をしています。大学へ行かない日も発注作業をしたり、図面を引いたり、大きな作品を作るために資格を取ったり……などです。あとはたくさん食べて動いて健康に生きています。制作のためのエネルギーを蓄えるためによく寝ています。
取手に住んで制作をしながらリサーチを進めていくうちに、自転車を使った作品を作ることに意味があると感じたことから、最近では自転車を使った作品シリーズを続けています。
素材になるのは放置自転車です。街なかに放置されているものだけではなくて、乗り手がいなくなって家の軒下で風雨にさらされているものも”家庭内”放置自転車と呼んで。
作品の素材にするために、最初は直接大学があるエリア、小文間の家を一軒一軒訪ねて回って。その後、たくさんの台数が必要になったときは、取手市役所の方が親身になってサポートしてくれました。
「廻転する不在」2020年 撮影:高橋生也
作品発表の予定は、直近だと「越後妻有アートトリエンナーレ・大地の芸術祭2021」へ作品を展示予定です(その後は10年間作品が常設)。取手で放置自転車を集めたように、地域の人々と関わりながら作品を制作するプロセスを、新潟など他の地域で実践することができることや、小さな地域からはじまった自分の作品制作を国際的な舞台に向けて発信できることがとても楽しみです。
コロナ禍を受けて、オンラインやデータの形式で作品を発表しなければ発表さえできない状況になりましたが、そういう時代を体験しているからこそ、改めて自分は手を動かして作品を作らないと満足できないと気付きました。全力で頑張っていきたいです。
今の時代は、生きていく上で、何かを作ることや生み出すことが当たり前になって来ています。
美術を志した私自身は、アート以外でどうやって生きていけばいいのかわかりません。まずは自分が納得するまで、アート作品を作ることでどうにか食いつなぎ、精一杯のアーチスト活動を続けていきたいと思っています。
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1998年 東京都生まれ。
東京藝術大学 大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 在籍。自転車などのジャンクと金属を組み合わせて、主に動く立体作品を制作している。