ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

JINI

お父さんも趣味で絵を描くような家でした。私は物心ついたころからずっと絵を描いていて、幼稚園のころには絵本をつくっていたみたいです。そのまま、地元の京都にある美大に進学しました。そこで初めて油絵を制作して。高校生くらいからアニメに夢中だったこともあって、アニメーターになりたい、画家になりたいっていう両方を抱えたまま大学生活を過ごしました。

一度は就職してみようと思って、卒業後はアニメーターとして働いたんです。入りたい会社に入社できたし、先輩たちはすごくかっこよかったんですけど、私の技術が追いつかなくて。1年が経った頃、あなたは別の仕事が向いてるかもって言われました。結局2年働いて、やっぱり制作しようと思って、藝大の大学院に入ったんです。

取手に来たのは、先端芸術表現科があったから。コロナ禍で学校に行けなくなって、家で制作するのは狭いなと思っていたとき、このシェアアトリエを知りました。今は大学とこことで使い分けながら、制作をしている感じです。

大学のころから、人の肉体に興味があって。きっかけはセシリー・ブラウンという画家の作品を観たことです。セクシャルな場面を、女性の視点から描いている画家さんで。私もこういう表現がしたいって思ったのが大きかったかも知れません。あとは大学の授業でフェミニズムについて学んで。女性視点で描きたいと思うようになりました。

肉体を描こうとするので、ピンクや赤が多くなりがちで。かわいい色って言われたりもするんですけど、私にとっては肉の色というイメージで使っています。

私の場合は、日常生活のなかで「これを描きたいな」「これなら観る人にいろいろ感じてもらえそうだな」っていう場面を写真に撮っておいて、それを感じた光景みたいなものを描いています。

描いているときにはいろいろ考えずに、自分の身体感覚を頼りにしています。自分が快か不快か、触感で描く。描くときに、どんな身体感覚を覚えているかっていうのを一番重要視しています。絵の具って半分液体、半分個体みたいな質感じゃないですか。それを筆にとって、紙などの支持体の抵抗感があって。それをどこまで滑らかにするか、どういうストロークで描くか。絵具と私の身体との間に発生している感触を感じているんです。

壁にかけている大きな絵は、髪の毛をいじっている人がモチーフです。筆だと小さすぎるから、手で描いていきました。はじめてキャンバスを使ったんですけど、この絵は層を意識したというか。厚みがぜんぜんでなくて。違う質感や色を意識しながらのせていった感じです。

描きはじめ、前半くらいが一番楽しいですね。そこから仕上げに入るぞっていうところから、苦戦します。目指しているものがあるんですけど、塗り重ねていくうちに、最初に描いたラフの雰囲気を維持するのが難しくなってくるんです。一筆でそれまでのすべてが台無しになっちゃったりするので、すごく神経を使います。

一度完成したと思って置いておいて、しばらくしてからもう少し塗り重ねるようなことも多いですね。「終わった。あ、違うかも」って、完成のタイミングが3回くらいあったりして。

2020年に、小学校でワークショップをさせてもらう機会があったんです。私がやっているように、触感で描くことを体験してもらいました。緊張したけど、すごく楽しかったですね。それがきっかけになって、今、知り合いのダンサーさんにワークショップをしてもらおうと考えているんです。

ちょっと絵から離れようと思っているというか。絵画が自分にとって一番表現しやすいメディアだっていうことはわかっているんですけど、ちょっと1人で絵を描くことに限界を感じていて。このまま続けていても同じような作品しかできないので、ステップアップするために、別のことをしたほうがいいと思ったんです。

将来はまだ迷っているところもあるけれど、絵はずっと描き続けると思います。研究職にもあこがれがあるので、平行して道を探ってみたいと考えているところです。