Music and Beyond 吉原 聡
今、こうして毎日楽器を触っているのが不思議なくらい、子どものころは音楽に興味がありませんでした。3歳の時にカスタネットを持たされても、叩くことさえしない。幼稚園のピアニカも一人だけ頑として弾かないっていう。うちの親はけっこう音楽をよく聴くんですけどね。決められた音を、決められた通りに出すということが受け入れられなかったのかもしれません。
中学1年生の秋、たまたまテレビで「ギター入門」っていう番組をやっていて。そのときに流れてきたギターの音を聞いて、なんかもうビビッとくるものがあって。理由はわからないんです。その日を境に、取り憑かれたように毎日ギターを弾くようになりました。これがギター人生の始まりです。
次第にいろいろな楽器に興味を持つようになって。聴きたいというよりも触りたい。自分でその音を再現したみたい。当時はドラムセットなんてないので、キーボードの電子音でドラムを叩き、それをカセットテープに録音して、ベースを重ね、ギターを重ねて。1人で多重録音をしたり、音楽理論を独学で勉強したりしていました。

バンジョーに出会ったのは高校のとき。6歳上の先輩がプロのバンジョー奏者で、いつも校庭に練習しに来ていました。大きな音が出るし、これを弾いたら目立つぞって、教えてもらうようになって。
自分は音楽でやっていくんだと確信したのは、留学して、アメリカのリアルな音楽を聴いた高校3年のときですね。ボストンのバークリー音楽大学に進学して、ひたすらギターを弾いて、音楽三昧の日々でした。
当時意識していたわけではないのですが、僕は和音がすごく好きなんです。気持ちがいいというか、弾いていて幸せを感じます。和音が好きだし、リズムがつくれるし、旋律も奏でられる。いろいろな楽器のなかでもギターやバンジョーをメインにしてきたのは、そこなんだと思います。

大学で一緒に練習していた仲間はドラムがイタリア人、ベースがイスラエル人、キーボードがアメリカ人で。一緒にバンドをする音楽仲間ができて、化学反応を楽しむ、そこでコミュニケーションをとるおもしろさを知りました。
言語と音楽って、すごく接点があって。特にジャズなんかは、全部即興で演奏されていくんですけど、完全に会話なんですよ。譜面を正確になぞっているわけではなくて、自分で出したいメロディを弾いている。しゃべっているのと同じ、口ではなくて楽器を通して表現しているんです。
いろいろやっているなかで、プログラミングの勉強をした時期があります。そこから、言語を研究することにハマってしまって。今だとヘブライ語とか、韓国語とか。中国の南のほうで話されている広東語とか。僕のスマホの設定言語は、ギターのルーツであるスペイン語です。僕、常になにかを調べているんですよね。知りたいと思うと止まらない。それが、僕の活力になっていると感じています。

日本にプロのバンジョー奏者って数えるほどしかいません。CMでバンジョーの音が流れてきたら「あの人が弾いてるな」ってわかるくらいです。2024年には僕にバンジョーを教えてくれた青木さんがオクラホマのバンジョー博物館で殿堂入りをして、一緒に演奏する機会がありました。ふだんはコンサートで演奏したり、楽曲の編曲をしたり。自分の活動をしながら、取手では教室を開いています。
ギターやバンジョーはもちろん、ベースやドラム、音楽理論を学びたいっていう方もいらっしゃいます。お互いに続けやすいように曜日を固定せず、都合の合うところで予定を決めているんです。こんなに生活しやすいのに自由に楽器が弾けるのは、取手ならではだなって思うんですよね。


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Music and Beyond 吉原 聡