ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

水野 渚

今は、東京藝術大学大学院のグローバルアートプラクティス専攻に在籍しています。

小学生のときに、家がホストファミリーとして留学生を受け入れていたんです。そこが世界に対する興味の出発点で。大学では国際関係や国際開発について勉強していました。そこで学んだことや英語力を活かした仕事をしたいと思って、防衛省の語学専門職として働くことにしたんです。通訳したり大使館との折衝をするのが仕事です。

そのなかで、国際関係というのは、結局のところ個人と個人との関係なんだということを感じて。その経験から、もっと異文化コミュニケーションを学びたいと思い、デンマークの学校に留学しました。帰国したあとは、サステナビリティを専門にしているウェブメディアでライターをはじめました。

東南アジアに滞在して取材したり、国内外のいろんな方の話を聞いたりすごく楽しかったんですけど、だんだん、自分でもプロジェクトや企画をやってみたいという気持ちが出てきたんです。人の話を聞いて広める仕事だけじゃなくて、自分が取材される側、つくり手側になりたいって。

それで最初に、カンボジアのきれいな浜辺で白玉をつくって人に配り歩きました。白玉はいろんな色をつけられるし、形も変えてバリエーションがつくれるし、最後は食べて無駄にならないし。小さいアクションではあったけど、リアクションが得られるのが楽しくて、もっと続けようと思いました。

その後も国内外で「白玉deアート」という、白玉をつくるワークショップを開いてみたんです。視覚に障がいがある方が参加してくれたときには、触ることを楽しめたって言ってもらえたり。「白玉で10年後の自分を表現してみましょう」ってお題を出したときには、私は今を生きてるんだっていう人がいたりして。いろんな反応が返ってくるのがすごく新鮮でした。

やったことのないことをやってみたいという性格で。もともと絵を描くのも苦手意識があり、自分はクリエイティブな人間ではないと思っていて。だけど、だからこそ逆にやってみたいんですよね。

自分のやっている活動をどう発展させていけばいいのか。そのヒントを掴むために、大学院で学んでみることにしました。入学したのは2021年の春です。いろいろな視点や考えるきっかけをもらえるので、すごく楽しいですよ。

今はヤギのお世話をするチーム「ヤギの目」にも参加していて。最初は、ここに関わるといろんな学生やスタッフと関わりができるかなってくらいだったんです。実際にやってみたら活動の幅は広くて。自然と関われるというか。なにかを育てる、世話することを通じて、自分が体感できるものがあって続けています。

2021年9月にアトレ取手内にあるたいけん美じゅつ場 VIVAで開催したヤギの目の展覧会では、「ヤギの夢ぇ〜」という作品を出しました。野菜100%でできた紙で絵馬をつくって、参加者の方に自分の夢を書いてもらいました。それをヤギに食べさせると、夢がヤギの体内で消化され、そのフンが堆肥になって土に戻る。循環をテーマにした作品です。

もともと食べることが好きなんです。食欲を満たすっていうこともあるんですけど、人の身体は食べるものでできていますよね。食べるってすべての根源です。

一緒に食べる時間を過ごすこともそうですし、誰かがつくってくれたものを食べることは、その人の一部を食べるというか、取り入れることだと思っていて。自分と他者の境界を曖昧にする行為なんじゃないかって。いつか、自然と「食べる」という行為を考えたり実践できる場づくりができたらと考えているところです。

取手キャンパス内の畑では、最初のステップとして、さまざまな食材に加工できて育てやすい大豆を育てました。やっぱりなにかを育てるのは楽しいし、変化も見られるし、新しい発見もあるし。自分で食べるものはもっと自分で育てたいですね。