ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

神垣 優香

取手に住み始めたのは藝大の取手キャンパスがあったから。都内の美術予備校に、冬季と入試の直前だけ通っていたのですが、下宿の場所について「取手以外あり得なくない?家賃とか超安いよ」というノリであったため、まんまとそれを信じて取手に住み始めました。
そこから6年が経とうとして、今ではもう立派な取手市民になりました。
普段は日常性/非日常性の関係を主軸としながら、視覚的なイメージを空間の中に落とし込んで何か新しいイメージを生むような作品作りをしています。好奇心の幅が広く、様々な素材や表現方法を複合して最終的なアウトプットをすることが多いです。
《Copy and Paste series》は、リアルとデジタルの世界を「質感」という観点で捉えようとした写真シリーズです。まずリアルの風景を撮影してデジタルに変換し、そのイメージを「モノ」として出力したプリントを、リアルの世界にテクスチャーとして置いてみる。そしてそれを人間の目ではなく、カメラが最終的に一つのイメージとして捉える。
そこで生じる違和感や、リアルの世界でアナログなVRを体感しているような感覚を作品にできないかと試みた制作シリーズです。

《Copy and Paste series》写真, 2019年

芸術に関わる道に進んだのは、祖父の影響がとても大きいです。私の祖父は絵画やDIYがとても好きで、というより作ることが生活の一部として組み込まれているような人でした。2歳下に手がかかる妹がいたり、私自身祖父が好きだったこともあり、幼稚園に行かない週末はほどんど祖父の家で過ごしていました。そこで祖父の描く絵を見ていたり、祖父お手製のおもちゃで遊んだり、また祖父の真似をして、何故か大量にあった図鑑の中身を模写したりしていました。当時の記憶は、私が今活動を続けていることに深く結びついていて、創作の原点は祖父の存在なのだと深く感じています。
2021年、目前にあることとしては留学と就活と、芸術祭の参加など結構ビッグなイベントが続きます。また個人の活動を超えて、昨年ユニットを組んで活動を始めた、青豆クラシコの活動も続けていきたいと考えています。
最近は、作り手としての自分の幅が昔よりも広がってきたように感じます。プロジェクトのリーダー、デザイン、ワークショップの講師、そして今回のようなカメラマンのお仕事もそうです。ただ作品をつくるために手を動かしているだけに留まらず、本来の活動の副産物的であったものが社会とつながる要素として自分の中にあることを自覚してきました。 そのため、私が持っている経験や知識を活かしながら、一つの物事を多角的に見つめて、幅広い形でより精度が高いアウトプットをしていけたらと思います。そしてそれが自分自身の問いに答えるものであったり、誰かを助けられるものでありたいと願います。
社会にとって、芸術は大事だと思います。しかし状況によってこの大事という言葉の重みが変わってくるのかもしれないと思いました。少なくとも私は芸術で救われていると痛感しています。 制作を続ける理由は、つくることを通して私の世界がどんどん広がる実感があるからです。自分が手を動かして今まで見たことないものを生んだり、普通に生きていたらこんな面白い人に出会えなかったという出会いがあったり、色んな世界を体験させてくれます。そしてそれは私の心や感性を大きく刺激して、生きる指針に繋がっていたりします。恐らく続けているという感覚はなくて、もう私の一部になっているくらいのライフワークになっていると思います。