ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

コンフリart space / bar conflictable cube
葛谷允宏

なにをしている人かと聞かれたら、アーティストです。お酒出してるときには飲食店やってるって言うし、大学にいるときには助手だから、そのときどきですけどね。午前中から大学の仕事をするか、仕入れや仕込みをして、夕方からは店にいることが多いです。今はなかなか行けないんだけど、月に1回くらい山口のお店にも行くようにしています。

美大に入ろうと思ったのは小学生くらい。うちのじいちゃんが表具屋をやってたので、その影響かな。家に作業場と店があったから、ずっと仕事を見てたんですよね。表具屋になりたいと思ったこともあったけど、僕、美術の成績だけはよくて。美術だなっていう感じだったんです。

両親が共働きだったし、家の炊事は割とやっていて。買い物は母親が、ごはんを炊くのがばあちゃんで、俺がおかず。家族の体調に合わせてつくったりして。俺の役割っていうか、料理はコミュニケーションツール、っていうのが、俺のなかではできていたんですよね。

大学のころ、半年くらいかけて藤浩志さんの「かえっこ」の手伝いをしました。それが絵を描かなくなる一番のきっかけかな。絵を描かなくても、アーティストとして生きることができるんだって知ったんですよ。藤さんにはあこがれがあって、いつか藤さんと一緒に美術館で展示するんだっていうのはモチベーションのひとつでした。

大学院に入って取手に来てからは、定期的に食事のイベントを企画していました。家庭の味を楽しむためのパーティーを、その家のお母さんと企画したりして。やってるうちに、そのお母さんとめっちゃ仲良くなっちゃうわけですよ。修了制作では美術科のある全国の大学を回りながら、そこの学生と鍋をするっていう旅をして。知らない人と出会ってコミュニケーションをとるのはすごく楽しいですよね。食はコミュニケーションのツールっていうのは、家族のために料理をしていたころから変わっていないんだと思います。

のちに拝借景と呼ばれる家で展示をやらないかって声をかけてもらったのは、東南アジアをバックパックで回りながら、アートスペースをリサーチしていた頃です。取手に戻ってきてすぐは無一文だったので、利根川の土手でつくしを採ったり、公園で食べられそうなものを見つけたりしてました。拝借景では人が出たり入ったり、一緒に住みながら制作をしてましたね。

展示会をやってはパーティーを開いていていたんだけど、当時お金もなかったので、会費は500円とか300円とか。会費を安くするために、自転車で町中回って安い食材を見つけるんです。本来1000円かかるのを300円にするために、700円分、僕の労力がかかってるじゃないですか。これは仕事にしなきゃだめだと思って。ちょうどTAPが事務所を移転するっていうのを聞いたので、一緒にスペースつくりませんかって声をかけて。それで取手駅の西口につくったのが、コンフリです。

拝借景に集まってくるのはやっぱりアート関係の人ばっかりで。一般の人とか、地域の人との接点っていうのがほぼなくて。なんか狭かったんですよ。店をつくって、藝大の新歓を勝手に企画しました。そこに市役所とか取手の企業の新入社員を招待しようって、チラシを配りに行ったりして。いろんな企業の人も来るし、アーティストもいるし、ただただ飲んでる人もいるし。コンフリがいろんな人と出会う接点というか、入り口みたいになってきたかなっていう感じはしています。

西口に移転してそれなりに回るようになってきたころ、「山口でビエンナーレのレジデンス募集、審査員藤浩志」っていうのを見つけたんです。企画を考えて、山口の宇部で「日常劇場」という芝居劇をつくりました。いろいろな人の日常を、別の人がロールプレイして街中で演じるというもので。その拠点としていた場所が、山口のコンフリです。今もシェアキッチンとして使われていて、常に「日常劇場」がそこで行われている感じですね。

そのうち取手と宇部で人や企画が行き来したり、別の地域にも同じような場所をつくりたいです。いろんなものが回っていくようになると、コンフリはプロジェクトから、ようやく作品的なアウトプットになるのかなと思っています。

やってみたいことはね、けっこうあるんですよ。進めたいプロジェクトもあるし、店もよくしたいし、制作もしたいし。ちょっと前にうどんでオブジェをつくったんですけどね、もっと大きい作品にしたいなと思っていて。おもしろそうなことをやってみたい。じいちゃんが死ぬまで表具屋だったように、僕は死ぬまでアーティストでいたいんです。しばらくは今のように、プロジェクトと制作を行き来しながら、慌ただしくしていくんだと思います。


コンフリ art space / bar conflictable cube

葛谷允宏が運営する、アートスペース・バー。日本酒、クラフトビール、市場で仕入れ魚介や取手のバナナポーク、ラーメンなど。
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