ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

ミュージックグループあんだんて
佐藤 美和子

ピアノをはじめたのは5歳くらい。私の場合は中等部からピアノ科だったので、毎年、年に2回の試験に向けて練習して。ピアノをやりたいっていうよりは、もうこれしかないっていう感じで。今は自分の演奏と、学校で音楽を、家でピアノを教えてます。

忘れられないのは、小学校6年生のコンクールで。モーツアルトを弾いたんです。演奏中ね、なんか雲の中にいるみたいで。入ってたんでしょうね。余計なことを考えずに、ものすごく集中してたんです。

音楽はスポーツと同じように、とにかく練習練習なんですよね。人前で弾くときには、最低500回は弾かないと。まずはしつこく練習するのが音楽家の基本。それがないと、その先のおもしろみが出てこない。そこに行くまでが、大変なんですけどね。

中3のときに青山三郎という先生に巡り合って。音楽に対する姿勢や考え方に影響を受けました。そのなかで、ただ弾くだけじゃなくて、自分のオリジナリティを出さなくちゃ本物じゃないっていう先生なんです。誰かの真似じゃいけない、自分としてのものでなければ、音楽じゃないって。

音楽って楽譜がありますよね。作曲家が記号として書いたものを読み取って、それを自分のなかで解釈して音に出すんです。だけど、読み方ひとつで変わってきちゃうんですよ。たとえば「みなさんこんにちは」っていうのも、「みなさん、こんにちは」とか、「みな、さん、こ、ん、にちは」みたいに出すこともできる。

もちろん作曲家に対しては敬意を払って、逸脱するような弾き方をしてはだめなんですよ。だけど音符を追うだけじゃない。感じ取るっていうか。そういうのが大事だなって。

ずらずら音符を弾くんじゃなくて、「みなさん、こんにちは」って、語りかけるように弾いてみる。そうすると、音楽が言葉として腑に落ちるというか。入ってくるというか。そうすれば音楽が言葉みたいにわかってくるので、楽しくなるんですよ。音符を追うだけじゃない。感じとるっていうか。そういうのが大事かなって。

他の人にとっては変な感じがしても、それでいいんです。その生徒がそう弾きたいんだったら、尊重することも大事。譜面通りだけじゃなくて、ワクワクするような、ドキドキするような。いきいきした音楽であってほしいんです。

どういう練習をしてきたかは、ピアノの前に座っただけでわかるんですよ。1回弾けば、今週いそがしかったかな、なんかあったのかなってわかる。その人そのものが出るんじゃないかな。

生徒のなかには先生になったり、専門家になった子もいます。音楽を生業にしなくてもね、ずっと続けて、音楽性が豊かになって、好きになってくれればいいですよね。

 

ピアノのほかにずっと続けているのがお花です。ひとつひとつの枝ぶりを見て、どれを活かすか選択して、切って。どんどん、即興でやっていくかたちが性に合ってるみたいです。この頃は、自然な野の花だけで生けたりするのが好きですね。

どういう組み合わせでいけるかも大事ですよね。それはもう、お稽古のなかで積んでいくんですけど。私はけっこうのびのびとした花が好きなので。ぱっと、その花らしいっていうかね。花そのものを活かす。そこは、音楽の考え方と通じるところがあるかもしれませんね。練習を続けないといけないっていう部分もね。

楽器はやっぱり大変ですよ。だけど、死ぬまでできたらいいなって。音楽ってやめようと思っても、やめられないものじゃないですか。最近は生涯現役でいるための「脳トレリコーダー」を楽しむプロジェクトも立ち上げていて。社会の一翼を担いたいと思っているところです。