ART LIVES TORIDE ここで芸術が生まれる。

島田 忠幸

前は東京の下町でつくってて、取手に来たのは1991年。かみさんが取手出身なのよ。ちょうど藝大の取手校地ができて1、2年だったかな。最初は材料を仕入れるのに苦労したよね。東京にいたころは周りに町工場があったから、材料なんて電話したらぱっと入ったんだけどさ。ここはアルミ買うったって大変なわけよ。いろいろ調べて、付き合いもできて。今は楽になったけどね。

こっちに来てからすぐ、今の取手美術作家展、とりびをやってるメンバーと交流ができてさ。取手の関わりはけっこうありますよ。義理の息子もがんばって壁画とかやってるしね。アートプロジェクトで一緒になってさ、船つくったことがあったよね。

未来派が提唱されて、そのなかでいろんな素材を使うべきだっていう考え方が出てきてね。それが非常に豊かでおもしろいと思ってさ。ありとあらゆる素材を使ったよね。木彫からはじめて、プラスチック、金属と。

27歳のころかな。点の仕事、線の仕事、面の仕事って順にやっていけば、もう少し彫刻が理解できるんじゃないかと思って、点に近い砂を扱いはじめたわけだよ。それが受けちゃってね。それまで彫刻をやってきて、表面ばっかりで内部は気になってなかったわけ。だけど砂の場合はさ、ほじくると、内部が表面になってくる。そうすると内部と表面が入れ替わる。そのころに、ずっと企画展やらせてもらう画廊なんかにも出会ったんだよね。

砂を軽くするために、中にアルミを使ったことがあってさ。金属に対しての興味も非常にあったんだよね。あんまりひとつのことにこだわらないからさ。そこから、今つくってる動物シリーズがはじまるわけよ。

アルミのメッキを剥がしてみたらさ、なんかキリンみたいな模様だなって思って。いろいろ実験しながら、キリンをつくってみたわけよ。首だけで2メートル40。そしたらあっという間に売れちゃって。お、やってみようって。そういうきっかけだよね。

シマウマの縞はね、色を塗ってるわけじゃないの。箔を使ってみたらきれいだったんだよ。磨けば感じが変わるしさ。アルミは素材としておもしろいんだよね。だけどさ、アルミを素材にした作品ってそう多くないんだよ。なぜかっていうと、アルミはなかなか難しいんで、学校ではあんまり教えない。

やってる人が少ないってことは、作家としては魅力だよね。溶接棒の使い方ひとつにしても、ちゃんと勉強しないときれいにできないわけだ。アルミを触っていくうちに、知らなかったことがたくさんわかるんだよな。そういうかたちで、技法にも魅了されてつくってるよね。

彫刻っていうのはね、迷っちゃいけないの。最初にこうつくると思ったら、傾いててもつくっちゃう。ああでもないこうでもないって迷うと、ろくなことがないから。がーっとつくちゃう。

最初は床に絵を描いてね、針金で立体に起こして。それを頼りに金属を叩いていって。動物の写真を見ても、細かいところはわからないんだよね。でも骨格はわかるからさ。あとは表現だから。

今のところみんな、等身大でつくってるんだけどね。だからでかいのよ。これはテナガザルなんだけど、タイトルは「お手上げ」。そうやって、おもしろがってやってるんだけどさ。

ラクダのコブに蛇口をつけて、ひねるとワインがでてくるようにしたりさ。これはオオアリクイとコアリクイ。コアリクイは木の上で生活してるのよ。しっぽを巻きつけて。それぞれ工夫して生きてるんだよね。それがおもしろいなと思ってね。

哺乳類っていうのはさ、4800種類くらいいるんだよな。人間も哺乳類なんだけどさ。生き延びるために進化を続けていたわけなんだよね、どんどん。その進化の過程っていうのがすごいんだよね。1種類じゃおもしろくないわけだよ。アートシーンを追うことをやめて、別の価値観を追い求めているっていう感じだよな。

目標は100点。今41点くらいかな。まだまだ、あと60点くらいつくらないと。大変だよ。 アートっていうのはね、数がないと話にならないんだよ。いい作品がひとつできましたっていうんじゃ。数は力だよね。火が付けば世界中から買いに来るだろうからね。数がないとね。

いろんなところ行かせてもらったけど、2ヶ月もいるとね、どこの国も、ここに住むのもいいかもなって思うよね。グルジアでつくったときは、道具の扱い方がぜんぜん違うんだよ。羊を自分たちでさばいて食べるとかさ。そういう文化の差みたいなのはおもしろいよな。

今年は茨城と、新潟とあってね。発表の場が常に与えられているのは、作家としては嬉しいよね。

非公開の作品も上にあるけど、ちょっと見てく?